『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』レビュー|昭和ミステリの空気と“サウンドノベル”の源流(ファミコン・ディスクシステム/1988)

アイキャッチ画像 ゲーム紹介
筆者所有の「ファミコン探偵俱楽部 消えた後継者 前編・後編」ディスク(筆者撮影)

要点まとめ(30秒)

  • こういう人に刺さる:昭和テイストのサスペンス/テキストADVでストーリーと雰囲気を味わいたい人
  • 推しどころ3選:①前後編+連続殺人が紡ぐ物語、②「おもいだす/すいりする」などのコマンド設計、③ディスクシステムの拡張音源を活用した耳に残るサウンド
  • いま遊ぶなら:手軽さ&没入はSwitchリメイク(2021)、当時の雰囲気を噛みしめるならFDS原作
  • ひと言判定サウンドノベルの源流とも言える任天堂の傑作ADVゲーム。

基本データ

  • 機種:ファミリーコンピュータ・ディスクシステム(FDS)
  • 発売:前編 1988年4月27日/後編 1988年6月14日(前後編の二部構成)
  • 発売/開発:任天堂
  • 当時価格:各 2,600円(前編・後編)
  • ジャンル:コマンド選択式アドベンチャー
  • セーブ:ディスクカードに保存(途中でA/B面入れ替え)

どんなゲーム?(概要)

ファミコン探偵俱楽部のタイトル画面
ゲーム序盤の掴みが終わった後で表示されるタイトル。おどろおどろしい演出がなんとも言えない雰囲気を醸し出している。(筆者プレイ中の画面を撮影)

記憶を失った若い探偵助手が、名家・綾城家をめぐる不審死と村の伝承に絡む連続殺人の真相を追う。推理の複雑さ、自由度より物語のドラマ性と“テンポよくストーリーを追う体験”を重視。会話の節目には重要情報を示す効果音が鳴るやさしい設計と、後半には簡易3D迷路の捜索要素も。昭和ADVゲームのすべてが詰まった一本。

主なコマンド早見表(FDS版)

  • ばしょいどう/よぶ/きく/みせる/しらべる:基本動作
  • おもいだす:失われた記憶の補助
  • すいりする:節目でそれまでに得た情報を整理し、前進のカギに
  • そうさやめる:セーブ確認だけでなく“心理的な揺さぶり”に機能する場面も
  • 画面探索時は「どこ?」で指カーソルを出して対象部位を調査

場面により使用可能コマンドがあえて非表示。会話を出し切ると移動が現れる等、フラグ立て状況を分かりやすくする配慮。

当時プレイした時の記憶

  • 雑誌で存在を知り、当時『ポートピア連続殺人事件』でコマンド式ADVの魅力にハマっていたこともあり、強く興味を持った。前編はディスク書き換えで遊んだ記憶がある。当時は書き換えが500円という安さもあり、そこまで期待せずにプレイを始めた。
  • しかし実際に前編をプレイすると、演出や音楽の完成度に驚かされ、物語にも強く引き込まれたのを鮮明に覚えている。その時点ではまだ後編が発売されておらず、やがてパッケージ版が登場。先が気になって仕方なく、書き換え開始を待てずにすぐパッケージ版を購入した。差額は2000円ほどで、小学生には大きな出費だったが、それほど気に入っていた証でもある。
  • 続編『ファミコン探偵倶楽部 うしろに立つ少女』は、最初からパッケージ版を購入。お気に入りだったため、他のゲームで上書きすることもなく、大切に所持していた。その後は新作が出ることもなく、完全に諦めていたが――Switch版で新作が発表された瞬間、腰を抜かすほど驚いた。

ファンというより信者

Switch版リメイク外箱
筆者所有のSwitch版リメイク(筆者撮影)

シリーズのファンならぜひ所蔵しておきたい、Switchリメイクの物理版『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者・うしろに立つ少女 COLLECTOR’S EDITION』。限定生産ゆえ出回りは少なく、フリマ相場も高めに推移しているが、筆者は手放すつもりはない。

Switch向け新作ファミコン探偵俱楽部の外箱
筆者所有のSwitch向け新作「ファミコン探偵俱楽部 笑み男」(筆者撮影)

当然、新作も単体パッケージでもダウンロード版でもなく、『ファミコン探偵倶楽部 笑み男 COLLECTOR’S EDITION』を選択。調査ファイルサウンドトラック、そして1/2スケールの“証拠品”レプリカまで付くとなれば、もはや物的証拠として押収する他ない。

そう、筆者は単なるファミ探のファンではなく、原作からの筋金入り信者です。

大人目線で再評価(短評)

  1. “読む快楽”>“自由推理”
    総当たりでも前に進める親切さ。その分“解いた感”は薄めだが、テンポよく物語が進み、ストーリを楽しむのに向いている
  2. コマンド設計の妙
    “思考の段取り”をわかりやすく整理できるコマンド設計点がユーザーフレンドリー。シーンごとの選択肢も限定的で、いざという時の総当たりも苦にならない。
  3. FDSならではの味
    ディスク入替・セーブ音・キー情報の“ピローン”という効果音が、事件を一段ずつ登る感覚を演出。

良い点 / 惜しい点 / 総評

オープニングの様子
ゲーム開始後の様子。記憶喪失から始まるドラマティックな導入が今後の展開に期待を持たせる(筆者プレイ中の画面を撮影)
事務所であゆみちゃんと話している様子
探偵事務所で本作のヒロイン、あゆみちゃんと話す様子(筆者プレイ中の画面を撮影)

良い点

  • 物語の牽引力:前後編で積み上がる相関図と因縁が物語を演出と、我らがヒロインあゆみちゃん
  • コマンドの意味づけ:コマンド総当たりをしなくてもある程度、正しい選択肢を想像できる予測可能性
  • 当時を伝える保存性:効果音・UI・面切り替え等、レトロADVの教材的価値

惜しい点

  • 自由度は控えめ:最終的に総当たりOKゆえの“解いた感”の薄さは人を選ぶ
  • 進行の“溜め”:重ね聞きや探索の取りこぼしで停滞しやすい箇所がある(それ故、正しい選択肢をある程度予測できても念のため総当たりしがちに)
  • 入手性:FDS実機は環境構築のハードルが高い(VC配信は現在販売終了)

総評(ひと言判定)
“昭和サスペンスをテレビで“読む”ゲーム”。 推理の自由度より、テンポよくストーリーで魅せる名作アドベンチャー。

いま遊ぶ方法(実機/移植/配信)

  • オリジナル(FDS):前後編。かつてはWii/3DS/Wii UでVC配信(現在は販売終了)
  • GBA『ファミコンミニ:ディスクシステムセレクション』(2004):前後編を1本に収録(中古流通)
  • Nintendo Switchリメイク(2021)フルボイス/新規ビジュアル/ログ等のQOL。2作セットのコレクターズ・エディションやサントラなど関連商品もあり。もし「原作に近い雰囲気」を味わいたい場合、リメイク版は8bit風BGMに切り替え可能なので、その設定で遊ぶのがおすすめ

リメイクの主な違い(ざっくり)
物語は原作準拠。演出(作画・ボイス)とUIが現代化され、没入感が強化。その分、テンポは遅くなっているが、皆口裕子さん演じる橘あゆみとの話はいつまでも聞いていられる。

小ネタ・豆知識

  • 橘あゆみは『スマブラDX』で“フィギュア”、『スマブラSP』では“スピリット”として登場
  • サテラビューの“幻の関連作”『BS探偵倶楽部 雪に消えた過去』という衛星放送限定の派生作があった(が、今となっては遊ぶ方法はない)

参考情報

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