
これまでの人生、家計管理は妻に任せっきりでしたが、40代後半になって思いがけず離婚したこともあり、「今後、何があっても生活に困ることが無いように」と、資産運用を本格的に考え始めました。まずは手元資金から運用を始めましたが、正直に言えば、常に自分の投資判断に自信はありませんし、今後、時間とともに考え方、やり方が変わっていく可能性も高いと思っています。投資経験の長い方から見れば「それは違うんじゃない?」と映る点もあるはずです。それでも、いまの自分なりの考え方と根拠を記録として残しておきたい。ブログで公開する以上、恥ずかしくない内容にするために勉強すること自体に意義があると考え、ここに初めての投稿を書いています。同じような境遇の方の参考になれば嬉しいです。
理解、管理できないリスクは取らない
資産運用でいちばん大事だと思っているのは継続です。実際、モーニングスターの“Mind the Gap”調査では、投資信託そのもののリターンに対して投資家が実際に得たリターンは平均で年▲1.2%ほど低かった(売買の出入りで取り逃がしている)という結果が出ています。私はこの数字を見て、「素人が無駄に考えてバタバタするより“黙って続ける仕組みづくり”の方が効く」と考えました。
そして、重視するのはインデックス投資の基本である、長期・分散・低コストです。「低コスト」は将来成績の有力な予測変数だという実証があり、費用が低いファンドほど結果が良くなりやすいというモーニングスターの分析もあります。これには、費用が安いから成功するのではなく、成功しているから資金が集まって費用が安いという逆因果の可能性はありますが。「分散」については、Vanguardの投資原則も、広い分散と現実的な期待値に基づく資産配分を繰り返し強調しています。
ただ、40代後半からの資産運用の問題は「長期」の部分です。健康なうちに資産を成長させる時間は多くありません。しかし、市場は市場の論理で動いており、私個人の事情など配慮してくれません。「それならハイリスク・ハイリターンで挽回!」というご都合主義的な発想も、成功する根拠が全くありません。それで上手くいくなら、みんなそれで大金持ちになってますよね。また、焦りからレバレッジ型・インバース型ETFのような短期の値動きに最適化された商品へ手を伸ばすのは避けるべきです。私自身は「自分で理解、管理しきれないハイリスクな商品に“勝手な希望”を託さない」という線引きをしています。
個別株も同様です。大部分のアクティブファンドが、インデックス投信のパフォーマンスを上回れないというデータ(P10)もありますし、プロですら個別株は難しいのに、素人の私が個別株で指数を上回る運用リターンを確実に出せるなど考えるべきでない。個別株をやるぐらいなら、FANG+のようなハイリスクな投信を買う方がまだマシと思います。(ちなみに、FANG+すら長期投資に向かないハイリスク銘柄と思って手を出さない私です)
では、期間が短い中でどう資産を増やすか。入金力(元本)を高めるしかありません。リターン=市場に預けた金額×期間ですから、資産の整理・売却で元本を大きくできれば、比較的リスクの低いインデックス投信でも、短期間でも生活に必要な利益額を出しやすい。
一方で、一括で入れるべきか、それとも時間分散で入れるべきかは悩ましいところです。Vanguardの研究では「一括投資は約3分の2のケースでドルコスト平均法(時間分散)よりリターンが高かった」という結果が示されています(ただし心理的後悔リスクはドルコスト平均法の方が低い)。私は何かと後悔しがちな性格なので、“元本づくりは攻め、元本の半額程度は一括入金しつつ、残りは12~24か月で積立るなど、後悔リスクを下げる”という折衷案にしています。“米国株は過大評価されている”という意見も聴く中で、こうした方が枕を高くして寝られると思うからです。
まとめると、私の考えはこうです。
- 続けることを最優先(資金的なリスク許容度より、心理的なリスク許容度を重視する)
長期・分散・低コストの“地味な王道”に寄りかかる(長期は難しいので、できるだけ元本を大きくする)- 短期だからといって高レバや個別株で挽回を狙わない
- 一括と分割の組み合わせで後悔を抑える
この考え方も、時間とともに変わる前提で進めますが、ここでの考えは資産運用の王道だと思うので、出来るだけ目先の市況変化や、著名人のポジショントークに惑わされることなく、続けていきたいと考えています。
“目標”と“前提”を確認
目標もなく、ただ投資リターンを求めるより、何のために資産運用をするのか、何を達成できれば満足するのかまとめました。
- 目標
- 少し早め(55~60歳)にリタイアする
- 90歳で死ぬと仮定し、80%以上の確率で残資産がインフレ調整後の実質ベースで300万円残っていること
- 前提
- 投資元本
- 5,500万円(2026年4月までに準備)
- 投資リターン率
- 株式インデックス投信(70%)+債券中心の安定資産クラス(30%)の組み合わせで、実質ベースで年5~6%程度のリターン率
- FIRE前
- 生活費:30万円/月×(12か月+1.5か月)≒410万円/年
- 積立投資:35万円/月×12か月=420万円/年
- 取り崩し:なし
- FIRE後~65歳
- 生活費:25万円×(12か月+1.5か月)≒340万円/年
- 副業手取り:10万円/月×12か月=120万円/年
- 積立投資:なし
- 取り崩し:生活費ー副業手取り
- 65歳以降
- 生活費:22万円×(12か月+1.5か月)≒300万円/年
- 年金:12万円/月×12か月=144万円/年
- 積立投資:なし
- 取り崩し:生活費ー年金
- 投資元本
この条件で、目標を達成可能か、可能なら最短何歳でFIREできるのか、モンテカルロシミュレーションをした結果を次回以降、記事にしたいと思います。
まずディフェンス:心が折れないための土台
- 生活防衛資金:最悪、FIRE直後にリーマンショック級の構造型不況が発生し、回復に4~5年かかると想定します。株価が回復するまで、株価と相関性が低い、または逆相関の資産を取り崩しながら、評価額が下がった株式インデックス投信の売却をできるだけ先送りするための生活防衛資金を積み上げます。
- 短期バケツとして、
- 生活費1年分を現金で確保
- 追加1年分をインフレ連動国債インデックス、短期国債など低ボラティリティ資産で確保
- 中期バケツとして、追加で3年分を
- 純金インデックス or ゴールドETF
- 中~長期債券
- 8資産均等型インデックスなどで確保
- 残りを長期バケツとして、オルカン、S&P500など成長性の高い定番インデックス投信でリターンを狙う(FANG+やNASDAQ100のような高成長ながら低分散の投信は避けるか比率を抑える)
- 短期バケツとして、
- 高コスト負債の整理:金利の高い負債は“確実なマイナス”なので返済または売却。
- 生活コストの削減:家計簿を付け、日々のコストを把握・削減することで、FIRE前は入金力を高め、FIRE後は取り崩し額を抑える。保険は掛け捨てのみ残し、貯蓄型は解約して投資元本に回す。
この3点があると、下げ相場でも行動を急ぎにくくなり、継続の確率が上がる感覚があります。
具体的に考えているポートフォリオ
重視すべきことは、
- 低コストで長期の結果がブレにくい
- 広範分散で個別の失敗を引きずりにくい
- 感情から距離を置ける仕組みをつくりやすい
ボーグルの「シンプルに、コストを抑え、方針を曲げない(stay the course)」という考えに共感しています。
オルカン(全世界株式)か、S&P500(米国株式)
- 基本はオルカン:私は心配性なので、S&P500だと氾濫する米国の情報に振り回される感覚があります。全世界なら(実質6割強は米国株ですが)世界中の情勢を把握することはできないので、あれこれ考えるのを諦めることができます。
- S&P500を少し含める:とはいえ、後悔しやすい性格でもあるため、過去のS&P500の平均リターン率、米国企業の強さを考えると、オルカン一択で高成長を取り逃がして後悔するのは目に見えており、一定の割合でS&P500を混ぜます。
- また、AI系の仕事をしている関係上、高ボラティリティではありますが、個人的な思い入れからNASDAQ100も若干混ぜます。
安定資産はどうするか
資産運用を考えるうえで短期~中期バケツの「安定資産」をどう置くかはいつも悩みどころです。私は以下の4つで安定資産を組むことにしました。それぞれにもっともらしい理由を整理しておきます。
- 現金
生活防衛資金や緊急時の出金に備えるため。どんな資産も売却にはタイミングのリスクがあるので、相場に左右されない現金を一定割合持っておくと安心感がある。心理的にも「下がってもすぐに売らなくていい」という余裕が生まれる。現金を持ちすぎるとインフレ環境では資産価値が大きく目減りするため、生活費1年分程度を目安とする。 - 純金インデックス
インフレや地政学リスクに対する保険。金そのものは配当を生まないが、株式や債券が同時に下がる局面で相対的に強さを発揮することがある。通貨価値が揺らぐときの「最後の安全資産」として少量を混ぜておく。 - TLT(米国超長期国債ETF)
株式が急落したときに逆相関で値上がりすることがあるため、ポートフォリオ全体のボラティリティを下げる役割を期待。米国金利が低下局面に入れば価格上昇の余地も大きい。日本円ベースでは為替リスクもあるが、株式リスクと違う動きをする点を評価している。毎月の分配金も一定の魅力がある。価格が下がっているため、現在は買い時と考えている。 - 8資産均等型(バランスファンド)
分散を「おまかせ」で実現できる商品。株式・債券・REIT・国内外を均等に組み入れることで、単独資産に比べて値動きがマイルドになる。自分でリバランスする手間を減らしつつ、分散の効果を享受する「手堅い安定枠」として位置づけている。一定の成長率がある代わりに、株式比率が約3分の1程度あり、株暴落時に一定の下落は覚悟する。中期バケツの最後の砦。
まとめると、現金は即応性、金は非常時の保険、TLTは株との逆相関、8資産均等型は自動分散と、それぞれ別の角度から“安定”を補完するイメージです。ひとつだけに頼らず、異なる性質を組み合わせることで全体の守りを厚くしています。
将来的には、米国短期国債も組み入れることを検討しています。
- SHV(米国短期国債ETF)
残存期間が1年未満の米国短期国債に投資するETFで、値動きが非常に安定している。金利がある程度つきながら価格変動はほぼないため、現金代替やキャッシュポジションの置き場として機能する。将来的に取り崩し期が近づいた際、為替タイミングを分散しつつ円転する前の待機資産としても活用できると考えている。価格変動の要素が実質為替レートしかないため、出来るだけ円高の時に購入したい。
選択した投信/ETF銘柄
ひとまず手元の1000万円強を下記のポートフォリオを組んでいます。近日中に資産クラスの比率を含めた資産状況を記事にしたいと思います。
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
- eMAXIS NASDAQ100インデックス
- eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
- 三菱UFJ 純金ファンド
- iShares 20+ Year Treasury Bond ETF (TLT)
- 現金
為替リスクについての考え方
私は、資産形成期における為替リスクは「ノイズ」として割り切ってよいのではないかと考えています。理由は、株式市場そのものの成長リターンの方が大きく、長期で見れば為替の上下動よりも企業の成長や市場全体のリスクプレミアムの方が結果に効いてくると思うからです。また、為替の動きを正確に読むことはほぼ不可能で、そこに神経を使うよりは「長期・分散・低コスト」の王道を守った方が合理的だと感じています。
一方で、資産を実際に取り崩す時期が近づいたら話は別だと思っています。将来の生活費や老後資金は円で必要になる以上、取り崩し直前で大きな円高局面にぶつかると、資産の円換算額が大きく減ってしまうリスクがあります。これを避けるには、次のような工夫が有効だと考えています。
- 取り崩し気が近づいたら、一部を為替ヘッジありの投信に入れ替えることで、円ベースの価値を安定させる
- 一度に円転せず、時間分散して複数回に分けて売却・円転することで、為替タイミングの偏りをならす
つまり、成長期は為替リスクを気にせず“ノイズ”として受け入れる、そして取り崩しが近づいたら徐々に為替の影響を和らげる手を打つ。これが、現時点での私のスタンスです。完璧な答えはなく、状況によって考えは変わるかもしれませんが、「今の自分の方針」としてこう整理しています。
買い方のルール:感情を挟む余地を減らすためのルール化
- 積立(ドルコスト平均法):継続の装置
- 一括&分割:まとまった資金は半分を一括、残りを12か月などに分けて投入(心理的安全性を確保)
- リバランス:目標比率±5ptで機械的に実施
- 暴落時の行動表をあらかじめ用意
- ① 生活防衛資金の残高確認
- ② 目標・必要利回りの再確認
- ③ 買い増し余力の上限を事前に決める
- ④ 買い増し開始タイミングを事前に決める(下落前最高値からマイナス25%)
避けるべきもの
- 一点集中・高レバ:短期で当てに行く発想と、自分の“折れやすさ”は相性が悪い
- 複雑で高利回りをうたう商品:理解が浅いまま持つと不安が増幅
- “話題だから”の売買:目的・期間・必要利回りと整合しないならスルー
- “いい投資案件がある“オジサン:いい投資案件なら本人が借金してやれば良い。機関投資家に相手にされず個人投資家の資金を当てにする=良くない話=スルー
「投資家の最大の敵はしばしば自分」という趣旨にうなずきつつ、終始一貫した規律ある行動が大事だと感じています。
今後のアクション
- 資産棚卸し:現金・投信・年金・不動産・保険(完了)
- 積立設定:先述の投信/ETF銘柄に積立設定(完了)
- 生活費の圧縮:固定費の削減・特に家賃を抑えるための引越し(実施中)
- 資産整理:不動産等、インデックス投信よりも成長率の低い資産は売却(実施中)
- 追加投資:年明け~春頃に整理した資金を入金
- 忘れる:あとはジタバタせずに待つのみ!
次回以降
文中で触れましたが、次回以降、現在の資産状況の紹介と、それをベースにした資産シミュレーションを記事にしていきたいと思います。資産シミュレーションは難しいツールや計算方法を使わず、だれでも真似できるよう(ちょっと間違うこともありますが)ChatGPTを使ってやっていこうと考えています。皆さんの参考になれば幸いです。
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