住宅は買うor借りる?ChatGPTのカスタムGPTで判定(仙台2LDK・20年居住の実例つき)

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首都圏在住の定年が近い知人が、「終の棲家」は地方の中古マンションを一括購入すべきか――それとも購入資金を運用しつつ賃貸で暮らすべきか――を迷っていました。場所や間取りで前提がすぐ変わるため、固定ロジックのプログラムではなく、都度その地域・希望の間取りの相場を調べて比較できる“ChatGPTのGPTs機能でカスタムGPTを作成する”ことにしました。

複雑な条件を利用者に調査・検討させるのはUX的に良くないため、シンプルな4種類のインプットをもとに、ChatGPTにシミュレーションに必要な前提の探索・補完から、買う/借りるの損益・ブレークイーブンまで自動で計算させる設計とします。

本記事では、カスタムGPTの作り方から使い方まで紹介し、具体的な利用例として、仙台駅徒歩10分・分譲2LDK・20年居住の実例で結果を紹介します。みなさんの条件にも、そのまま横展開できると思います。

GPTsとカスタムGPTの基礎

GPTsとは?

GPTsは、特定の用途に向けた指示、前提知識、機能を与えられたChatGPTのカスタム版の総称です。作成者が目的に合わせて設定を行い、同じ手順や判断基準を利用者が再現できる、“テンプレ的に再利用可能なチャットボット”と考えてください。

カスタムGPTとは?

カスタムGPTは、以下の要素を組み合わせて作られた“あなた専用のGPT”です。作るのが難しいと思うかもしれませんが、実態は、カスタムGPTの「名前」と「説明」は誰でも書けるとして、次の6点を丁寧に決めるだけです。

1) 指示
 カスタムGPTの目的、役割、処理内容、前提情報、必要データ、出力形式、制約事項などを定義します。殆どのカスタムGPTはこれらの項目で定義できますし、簡単な目的なら、いくつかの項目を抜いても問題ないと思います。
 例:役割の場合は『あなたは “住宅を一括購入すべきか、賃貸で済むべきかを定量的に判断するプロフェッショナル” です。ユーザーから最小限の質問だけを受け、国内事情に即した「購入 vs 賃貸」の比較を実行します。』など

2) 会話のきっかけ
 ユーザーがワンクリックで会話を始められる“例題ボタン”を用意します。
 例:比較したいエリア、間取り、中古マンションの築年数、比較期間など

3) 知識
 処理に役立つ資料やデータを追加します。
 例:固定資産税の目安、各種投資信託のリターン率一覧、用語集など

4) 推奨モデル
 そのGPTで基本的に使ってほしいモデルを指定します。
 例:シンプルな処理→GPT-5、複雑な処理→GPT-5 Thinkingなど

5) 機能
 必要に応じて、Web検索・データ分析(コード実行)・画像生成などを有効化します。
 例:ウェブ検索→相場情報の収集のため、画像生成→グラフ生成のため、コード インタープリターとデータ分析→モンテカルロシミュレーションのため

6) 外部サービス連携(アクション)
 必要なら外部APIと連携してデータ取得・送信を行います。
 例:スプレッドシートへ結果を書き出す(本記事の範囲外)

※6は専門知識がないと扱いにくいため、無視してかまいません。外部連携は自社のデータベース内の情報を参照したいとか、外部クラウドサービスと組み合わせたいなど、本格的なシステム連携に利用します。一般的な調べもの、シミュレーションは外部サービス連携なしで実行できます。

要するに:カスタムGPTは「やること(指示)× 使ってよい知識 × 使う道具 × 推奨モデル」を束ね、同じ入力から同じ品質の出力を繰り返し出せる仕組みです。

本記事で使うカスタムGPT

本記事では、住宅の「一括購入 vs 賃貸」を判定するテンプレを動かすためにカスタムGPTを使います。地域や間取りが変わると相場も変わるため、固定ロジックのプログラムではなく、その都度、指定エリア・間取りの相場を調べて前提を補完し、

  • ユーザーから与えられた最小限の指示
  • 指示から間接的に派生してChatGPTが追加調査したシミュレーション条件
  • 20年後の資産分布(P10/P50/P90)
  • ブレークイーブンポイント(一括購入と賃貸が拮抗するポイント)

などを表示します。場所や条件が違っても同じ手順で公平に比較でき、結果も再現可能です。
加えて、本テンプレでは最低限の入力条件を3パターン用意し、推奨モデルもカスタムGPT内で設定して利用者が使い方に迷わないようにしています。

用語表記について

本記事では公式の表記に合わせ、機能名は「GPT」「GPTs」、本記事で作成・使用するものは「カスタムGPT」と記載します。英語表記が一般的でないものは極力日本語で説明します。

補足:ChatGPTの契約プランとThinkingモードに関する注意

  • Free版でもGPTsは使えるが制限が厳しい:Freeは全体の利用上限が厳しく、Thinkingを前提にした重い処理は実用性が下がりがちです。安定運用したい場合は Plus/Pro/Team/Enterprise版を推奨します。
  • 作成・公開は有料プランが必要:GPTの作成ストアへの公開は有料プラン前提です。
  • 本記事のカスタムGPTは処理が複雑:Thinkingモードでも途中でエラーが出たり停止することがあります。利用者が多い時間帯は発生しやすいため、その場合は時間をあけて再実行してください。
  • 実測メモ:混雑時、3回実行して1回だけ完了というケースを確認しました(状況により変動)。

まずは適当なカスタムGPTを作りながら仕組みを理解

GPTsの画面
筆者がスクリーンショットを撮ったGPTsの画面

ChatGPTにログイン後、左メニューから「GPT」を選択すると、以下の3つが可能な画面が開きます。

  1. 画面中央のスペースで、パブリックに共有されているGPTを検索、利用することができる
  2. 画面右上の「マイGPT」から、過去に自分が作成したカスタムGPTを一覧・編集・削除できる(3と同様にカスタムGPTの新規作成もできる)
  3. 同じく画面右上の「+作成する」から、新しいカスタムGPTを作成できる

※契約しているプラン、設定により画面が違う場合があります。筆者はPlus版を利用しています。

カスタムGPTを作成

最初に、画面右上の「+作成する」をクリックし、カスタムGPTの作成画面を開きます。

カスタムGPTの作成画面

画面の左半分がGPTの設定を行うスペース、右半分はその結果が反映されたカスタムGPTをプレビュー、テストするスペースです。左半分はさらに上部のタブで「作成する」と「構成」に分かれています。

  • 作成する:ChatGPTと会話しながら“たたき台”を素早く組み上げるためのタブ。チャット形式で目的や要件を伝えると、「構成」タブ内の設定項目を自動的に設定してくれ、右側のプレビューで即テストできます。初期の方向性決めや試行錯誤に最適ですが、細かい調整は自分で行わないと、なかなか意図したとおりに動作しません。
  • 構成:完成度を高める“設計図”を記述するタブ。各項目を正確に入力し、公開前の最終設定を行います。

下記は、「作成する」タブでChatGPTに『今週の株価の動きをチャート化するカスタムGPTを作りたい。』と相談し、ChatGPTが「構成」タブを自動的に設定した結果です。

ChatGPTが自動設定したカスタムGPTの構成

上部の「アイコン(丸い点線に囲まれた+の部分)」と「名前」は設定されていませんが、それ以外の項目は設定されています。「コードインタープリターとデータ分析(数値計算などに有用)」はあっても良い気がしますが、チャートの画像化のみなら不要と判断したのでしょう。ちなみに、「指示」欄には以下のプロンプトが設定されています。

あなたは「今週の株価の動きをチャート化する」ことに特化したアシスタント。ユーザーが指定した銘柄の“今週”の値動きを、最新の市場データをブラウズして取得し、見やすいチャート画像と要点の短い解説、主要指標の表で提示する。デフォルトは日本語で応答し、ユーザーの言語に合わせて自動切替する。

【基本方針】
- 目的:今週(週初の月曜00:00〜現在まで、またはユーザーが指定した取引所の現地時間基準)の株価推移を、鮮明なチャート(ローソク足/ライン)と簡潔なサマリーで示す。
- 取得:ブラウザ機能で信頼できる金融データ源(例:取引所・著名な金融ポータル・API公開ページ等)を検索し、今週範囲の時系列データ(価格・出来高)を収集。可能なら出来高・イベント(決算、分割、配当)も反映。ソースは都度明記し、日付(現地時間)をはっきり示す。
- 可視化:キャンバス機能でチャートを描画。既定は日足ローソク+出来高、インジケーターはSMA(5/20)、今週高値・安値、前週比、変動率を注釈。ユーザーが短期スキャル等を求める場合は5分足/15分足などの短時間足に切替。見やすさを優先し、色数は抑え、凡例と注釈を明確にする。
- 出力構成:
  1) チャート画像(代替テキストつき)。
  2) 要点サマリー(本週のトレンド、重要な価格帯、イベント)。
  3) 主要指標の簡易表(始値/高値/安値/終値/出来高、週初比、ボラティリティ指標など)。
- 範囲の定義:「今週」はユーザーが明示しない場合、取引所の現地タイムゾーンを優先。タイムゾーンが曖昧なら最小限の確認を行う。ユーザーの希望があればUTCや任意TZに揃える。

【リクエスト解釈】
- 最低限必要:ティッカー(例:AAPL, 7203.T など)。
- 任意指定:取引所/国、足種(1/5/15/60分、日足)、指標(SMA, EMA, VWAP, RSI, MACD など)、比較銘柄、提出形式(PNG/SVG)。
- 不足情報があれば、作業を止めず合理的な既定値で補完し、必要最小限の質問のみ行う。

【ガイドライン】
- 投資助言は行わない。すべての解説は情報提供目的であると明記。
- 時系列やイベントは“日付”をはっきり書く(例:2025-09-15)。
- データの鮮度と正確性を重視。複数ソースで整合性をざっと確認し、明確な差異があれば注記。
- チャートはシンプルでコントラスト高め。陽線/陰線の色は視認性優先(例:陽=緑/陰=赤)。
- マーケット休日・時短・異常値は注記し、補正の有無を示す。
- 比較チャートでは軸を合わせ(%変化基準)、凡例を明示。
- 失敗時(データ未取得・シンボル不明)は丁寧に復旧策(別ティッカー、代替ソース、CSVアップロード)を提示。

【確認と省略の方針】
- 迷う点があっても作業を極力進め、明示的に仮定を書いてから可視化する。
- タイムゾーンや週の起算日に不確実性が残る場合は、取引所現地時間の週初〜現在で処理し、後で調整可能と伝える。

【トーン】
- 簡潔・実務的だが親切。専門用語は必要に応じて短く補足。
- 出力はコンパクトに。長文は避け、図表で要点が伝わるようにする。

【安全】
- 金融アドバイスを避け、過去データの事実に限定。将来予測は行わず、必要ならシナリオ例として控えめに記述。

このアシスタントにはブラウザ・キャンバス・画像生成の能力がある前提で振る舞い、PDF等の資料はスクリーンショットで確認する。

ひとまずこの設定で「会話のきっかけ」にChatGPTがプリセットした選択肢を選び、どのようにカスタムGPTが振舞うか確認してみます。その前に、まず名前を付けてカスタムGPTを保存します。ここでは「名前」欄に『株価を取得・チャート化』と入力します。必要な項目が埋まると、右上の「作成する」ボタンがアクティブ(白色)になり、クリックするとカスタムGPTが保存されます。保存する際、以下のダイアログが表示されますが、今回はテスト目的なので「自分だけ」を選択して「保存する」ボタンをクリックします。

カスタムGPTの実行

いよいよ作成したカスタムGPTを実行します。画面右側に表示されているプリセットの選択肢を選んでみると…ん?動かない…。なぜかプレビュー画面では、「会話のきっかけ」で設定した選択肢が動かないのです。動かす方法は以下の2通りです。

  • 画面左側の「会話のきっかけ」に入力されているテキストを、画面右側のチャット入力欄にコピペして実行する。要するに「プリセットの選択肢を選ぶ=そこに書いてある内容をチャット欄に転記して実行する」だけのことなのです。
  • いったんカスタムGPTの編集画面を閉じ、通常のチャットと同じようにカスタムGPTでチャットを始めると、プリセットの選択肢がクリックできます。

せっかくなので2番目の方法(本来の使い方)でテストしてみましょう。マイGPTの画面または左メニューに、作成したカスタムGPTが表示されているのでクリックします。

マイGPTの開き方

カスタムGPTの画面が開きます。通常のチャット画面と異なるのは、上部にチャットの「名前」が表示されていることと、「会話のきっかけ」が表示されている点です。「構成」タブで推奨モデルを選択しなかったので、ユーザーが選ぶことになります。内容的に難しめなので5 Thinkingを選択します。次に「会話のきっかけ」の1つを選択すると、指示に従ってChatGPTが処理を行います。「今週のAAPLを日足ローソク+出来高で可視化して」を選んでみます。

作成したカスタムGPTを開いた様子

下記が実行した結果です。厳密には、画面右側の「Canvas」領域の描画に何度か失敗しており、コンソール(折りたたんでいますがスクショ右下の「メッセージ」をクリックすると展開する)に出力されたエラーメッセージをチャット欄に貼り、「こんなエラーが出ているから修正して」を3回繰り返したら正常に表示されるようになりました。ChatGPTのおかげで最近何も考えず、検証もChatGPTまかせという状態です。「新しいものを柔軟に取り入れる姿勢」と前向きに考えましょう。

ところで指示が「今週の」となっているため、実行時点の月曜日の午前中だけしかデータがなく、殆ど意味がありませんが、意図した通りに動作はしているようです。「前週の月曜日からの」とか「直近1週間の」という指示に変えた方が良いかもしれませんね。

カスタムGPTの実行結果

ここまでで、カスタムGPTとは何か、その作り方、使い方を説明してきました。何となく仕組みは理解できたかと思います。それでは、前置きが長くなりましたが、本題である「住宅を一括購入 vs 賃貸の比較」のカスタムGPTを作成します。軽く仕組みを紹介する程度と思っていましたが、けっこう長くなりました(笑

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