資産運用をFIREとセットで考えている人にとって、「いつFIREできるのか?」は最大の関心事と思います。このタイミングを確率で判断する手法として、モンテカルロ・シミュレーションがあります。既製のシミュレーション・ツールや、Pythonでコードを書いて実施することもできますが、私は「ChatGPT式シミュレーション」を推しています。
専用ツールやPythonは“巨大で厳密な計算”に強い一方、ChatGPT方式は「発想→設計→検証→解説→条件を変更して再実行」を会話でループできるのが圧倒的な強みです。専門知識がなくても、その日のうちに仮説を形にし、意思決定に使えるレベルの参考情報になります。
ChatGPT方式のメリット(推しポイント)
- 速い:シミュレーション設定・前提・制約などを会話で即変更。シナリオ回しが桁違いに早い。
- ノーコード:Pythonや統計の事前学習を最小化。学習コストほぼゼロ。
- 設計漏れを防ぎやすい:相関・ボラ・為替・再投資・リバランスなど、抜けやすい前提を対話で洗い出し。
- 感度分析が楽:「ボラ±20%、為替±10%、引き出し額−5%」などを自然言語で一気に比較。
- アウトプット形式を選択:シミュレーション前提・式・注意点・結果サマリなどを、自然言語で指示して出力させることが可能。
- 発想が広がる:歴史的ストレスや最悪ケースなど、“見落としていた地雷”の提示が得られる。
結論:探索フェーズの価値最大化。様々な前提でシミュレーションを誰でも簡単に実施できる。
10分で考えるプロンプトに含めるべき情報例
- 資産運用の目標を簡潔に
- 現在〇歳で、出来るだけ早くFIREをしたい。
- 〇歳時の実質残資産〇万円以上の確率を〇%以上としたい
- シミュレーション前提をざっくり
- 元本額
- インフレ率
- 想定リターン/ボラ
- 引き出しルール
- 課税率の扱い
- 為替レートの扱い、など
- 想定ポートフォリオ
- 想定リターン/ボラをChatGPTに探索させる場合は、希望銘柄、保有比率を指定
- キャッシュフロー
- FIRE前後のキャッシュフロー(生活費、収入、追加投資額、取り崩し額など)
- FIRE前後以外にもキャッシュフローが変わる場合はそれぞれ指定(例えばFIRE後~年金受給まで、等)
- 出力仕様(例)
- 何歳からFIREを開始できるかの結果
- シミュレーションの前提条件を再確認するために表にまとめて出力
- 5年ごとの資産推移を10%分位、中央値、90%分位で出力
- 資産推移の出力値は、10%分位=5~15%分位の平均値、中央値=45~55%分位、90%分位=85~95%分位の平均値とする
ChatGPTのデメリット(+上手な付き合い方)
- 巨大計算は苦手(1万〜100万パスなど):→ 知識がある人は後日Pythonで裏取りできればベター
- 乱数・相関の厳密制御は弱い:→ パス数を絞り、決め打ちストレス&パーセンタイル比較中心に
- 再現性は低い:→ 実施するたびに結果が変わるため、プロンプトと結果を要保存
- 間違いがある:→ 異常な値を発見したときは、それChatGPT自身で検知して計算をやり直すサニティチェックを入れる(それでも完全制御は難しい)
- 価格:有償版(約3,000円)でないと難しい
知識のある方は、ChatGPTのCodex(コード生成機能)でシミュレーション要件をPythonコードに落とし、ChatGPTの出力結果の答え合わせ、再現性確保ができると思います。しかし、そうするとその後の試行錯誤もコードベースになり、煩雑になります。私はデータ・サイエンティスト級の実務知識は無いので、数値シミュレーションのコードレビューに自信がなく、正確性は割り切って使っています。
- 何度か実行して似たような回答が出れば一定の信頼性がある
- ChatGPTの別モデル、またはClaudeなど完全に別ベンダーのLLMに結果を精査させるのもあり(例えば、GPT 5 Thinkingで出した結果を、o3モデルで精査するなど)
モンテカルロ・シミュレーションとは?(超ざっくり)
一言でいうと「将来の相場は毎年バラつく」ことを前提に、そのバラつきをランダムに何千〜何万回も再現して、起こり得る資産の増減を“確率”で見える化する方法です。感覚や経験値的な予想ではなく、「どれくらいの確率でうまくいくか/危ないか」を数字で確かめます。
何をしているの?
- 年ごとのリターン(上がる年も下がる年もある)を乱数でたくさん作る
- そのたびに資産の増減(積立・取り崩し・リバランスなど)を計算
- 目標を満たした回数 ÷ 試行回数 = 確率を出す
- 例:1万回のうち8,600回で「90歳時に残資産1,000万円以上」→ 達成確率86%
何が分かるの?
- 達成確率:目標を達成できる見込み(例:FIRE後にお金が尽きない確率)
- 想定レンジ:資産が増えたり減ったりする幅(中央値・上下○%範囲)
- 危ない条件:取り崩し額が多すぎる/相場急落に弱い等のリスクの気づき
読み解き方
- 中央値=「いちばん典型的なコース」
- 上位/下位○%の帯(ファンチャート)=「良い時/悪い時の幅」
- 達成確率はゴールの“成功率”。やみくもに100%に近づけるのではなく、FIRE開始年齢を早めつつ、資産が枯渇しにくいバランスを見つける
よくある誤解
- あなたの未来を当てるものではない(沢山の人が同じ条件で資産運用したときの、ランダム性を考慮した結果分布)
- 入力次第で結果が変わる(平均リターン、ブレ幅、為替・手数料・税など)
- 大暴落はたまに起きる:過去データ通りに動くとは限らない → 安全余地を
ひとことで締めるなら
サイコロを何万回も振って“起こり得る未来”を地図にし、意思決定を感覚ではなく確率で行うための方法。
(注)シミュレーションは参考程度に捉え、最終判断はご自身のリスク許容度と相談して決めてください。
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