前回の記事で紹介した自宅AI環境の2台、GMKtec EVO-X2(Radeon 8060S/ユニファイドメモリ128GB)とGALLERIA(RTX 5090/VRAM 32GB)。「で、実際どのくらい速度が違うの?」を確かめるべく、画像・動画・音楽の生成AI3種目でガチンコ比較しました。
結論を先に言うと、RTX 5090はEVO-X2の約12〜23倍速い。ただし「EVO-X2は遅くて使い物にならない」という話でもありませんでした。詳細は本文でどうぞ。
測定方法:同一JSONをAPIで投げる
比較の公平性には気を使いました。ポイントは以下の通りです。
- ComfyUI公式テンプレートをそのまま使用:恣意的なチューニングを排除するため、設定はすべてテンプレートのデフォルトのまま
- ワークフローをAPI形式でエクスポートし、同一JSONを両機に投入:ComfyUIはREST APIでジョブを受け付けられるので、バイト単位で同じワークフロー定義を両機で実行できます。シード値も固定
- ComfyUIのバージョンは両機とも0.34.2で完全一致
- ウォームアップ後に複数回計測して平均:2回目以降の実行時間(ComfyUIの履歴タイムスタンプ)を採用
本記事では、そのモデルでの1回目の実行を「コールド」、2回目以降を「ウォーム」と呼びます。コールドではモデルファイル(数GB〜数十GB)をストレージから読み込んでGPUメモリへ展開する時間が上乗せされるため、生成そのものの速さを比べるならウォームが本命です。実運用でも、一度モデルが載ればそのまま連続生成するのが普通なので、体感に近いのはウォームの数字。一方「PCを立ち上げて最初の1枚が出るまで」を知りたい方はコールドの数字を見てください。
ちなみにこの測定、JSONのエクスポートからAPI投入・結果回収まで、すべてClaude(Cowork)にやらせました。私は寝ていただけです。良い時代になりました。
対象ワークフロー
| 種目 | テンプレート | 生成内容 |
|---|---|---|
| 画像(T2I) | Flux.2 Dev Text to Image | 1024×1024、20ステップ |
| 動画(T2V) | MiniMax H3: Text to Video | 5秒動画(音声付き)、0.4MP 16:9、20ステップ |
| 音楽 | MiniMax Music 3: Text to Music | 60秒楽曲(ボーカル入り)、30ステップ |
環境
| GALLERIA(RTX 5090) | GMKtec EVO-X2 | |
|---|---|---|
| GPU | GeForce RTX 5090(VRAM 32GB) | Radeon 8060S(GPU割当 約100GB) |
| ComfyUI | 0.34.2 | 0.34.2 |
| バックエンド | PyTorch 2.12.1+cu130 | PyTorch 2.9.1+ROCm 7.2.1 |
| OS | Windows 11 | Windows 11 |
※PyTorchのバージョンはCUDA版とROCm版で提供状況が異なるため完全には揃えられていません。この点はご了承ください。また消費電力の測定は今回準備が間に合わず見送りました(HWiNFO64で両機のログを取る方法を思いついたので、次の機会にやります)。
結果:総合
| 種目(ウォーム平均) | RTX 5090 | EVO-X2 | 速度差 |
|---|---|---|---|
| Flux.2 T2I(画像1枚) | 20.1秒 | 455.5秒(7.6分) | 約23倍 |
| MiniMax H3 T2V(5秒動画) | 72.1秒 | 1668.0秒(27.8分) | 約23倍 |
| MiniMax Music 3(60秒楽曲) | 44.4秒 | 551.7秒(9.2分) | 約12倍 |
圧倒的ではないか、5090軍は……。特筆すべきは音楽生成で、60秒の楽曲を44秒で生成=リアルタイムより速い。一方EVO-X2も3種目とも完走しており、後述の通り運用次第では十分実用になります。
種目別の詳細と生成物
Flux.2 Dev(画像生成)
| RTX 5090 | コールド50.5秒 / ウォーム 20.2、20.1、20.1秒(平均20.1秒) |
| EVO-X2 | コールド546.2秒 / ウォーム 549.0、412.1、405.4秒(平均455.5秒) |
EVO-X2は2回目(549秒)だけコールド並みに遅く、3回目以降は410秒前後で安定しました。キャッシュの効きが遅いのか原因は不明ですが、異常値を除くと平均408.8秒(約20倍差)です。
面白いのは生成結果の方。同一シードなら、CUDAとROCmという全く別のスタックでも構図・内容はほぼ完全に一致しました(ピクセル単位では平均1.6/255の微差あり)。上がRTX 5090、下がEVO-X2の生成です。間違い探しレベルです。


MiniMax H3(動画生成)
| RTX 5090 | コールド86.8秒 / ウォーム 72.2、71.9秒(平均72.1秒) |
| EVO-X2 | コールド1752.4秒 / ウォーム 1676.2、1659.8秒(平均27.8分) |
音声同時生成対応のMiniMax H3で、テンプレート付属のアクション映画風プロンプトをそのまま使用。5090は5秒動画を1分ちょっとで出してきます。EVO-X2は28分弱かかりますが、VRAM 100GB割当のおかげでメモリ不足に怯えずに完走するのは立派です。
MiniMax Music 3(音楽生成)
| RTX 5090 | コールド56.3秒 / ウォーム 44.4、44.3秒(平均44.4秒) |
| EVO-X2 | コールド565.6秒 / ウォーム 549.1、554.2秒(平均9.2分) |
テンプレート付属のLo-fiヒップホップのプロンプト+歌詞で60秒のボーカル入り楽曲を生成。両機の生成結果を聴き比べてみてください。
なぜここまで差がつくのか
「23倍」は体感として衝撃ですが、スペックを並べると理屈は通っています。要因は大きく3つです。
1. そもそもの馬力とメモリ帯域
| RTX 5090 | Radeon 8060S | 比 | |
|---|---|---|---|
| FP16演算(理論値) | 約209 TFLOPS(Tensorコア) | 約30〜59 TFLOPS | 約4〜7倍 |
| FP8演算(理論値) | 約838 TFLOPS | ハードウェア非対応 | — |
| メモリ帯域 | 1,792 GB/s(GDDR7) | 256 GB/s(LPDDR5X-8000) | 約7倍 |
拡散モデルの生成は演算とメモリ帯域の両方を食うため、素の馬力だけで4〜7倍の差が織り込み済み。EVO-X2の帯域256GB/sは「容量100GBを1つのAPUで扱える」ことの代償でもあります。
2. 低精度(量子化)演算のネイティブ対応差
今回のFlux.2はfp8、MiniMax H3はint8の量子化モデルです。RTX 5090(Blackwell世代)はFP8/FP4をTensorコアでネイティブ実行できるのに対し、RDNA 3.5の8060Sは低精度行列演算の専用ハードを持たず、fp16に戻して計算する形になります。つまり量子化モデルほど5090が有利。
実は今回のデータがそれを裏付けています。fp8/int8モデルのFlux.2とH3は約23倍差だったのに対し、唯一fp16モデルだったMusic 3だけ約12倍と差が半分に縮みました。量子化の恩恵がない種目では、ほぼ素の馬力差に近づくわけです。
3. ソフトウェアスタックの成熟度
CUDAは最適化されたアテンションカーネルなど周辺ツールが長年磨かれており、生成AI系ライブラリの多くがCUDA前提で最適化されています。一方、ROCmのWindows対応は始まったばかり。今回もEVO-X2のFlux.2で実行時間がばらつく(549秒→405秒)など、こなれていなさを感じる場面がありました。逆に言えば、ROCm側はソフトウェアの改善だけでまだ伸びしろがあるとも言えます。
考察:170万円の使い分けが見えてきた
- 試行錯誤はRTX 5090一択:プロンプトを変えて何度も回す作業は、1回20秒と7.6分では体験がまるで違います。画像・動画生成の主戦場はやはりCUDA
- EVO-X2は「仕込み型」なら実用圏:寝る前や外出前にキューへ積んでおけば、起きた頃には全部できています。今回も実際、私が寝ている間にEVO-X2が黙々と全ジョブを消化してくれました
- メモリの安心感はEVO-X2:5090はMiniMax H3のフル精度モデルでVRAM 32GBがほぼ埋まります。より大きいモデルはEVO-X2の100GB割当でないと載らない場面が出てくるはず。「速さの5090、容量のEVO-X2」という役割分担は今回も揺るがず
- 再現性は両機で確保できる:同一シードでほぼ同じ出力が得られるのは、2台運用(EVO-X2で下見→5090で本番)を考えると地味に重要な発見でした
ひとつ補足すると、今回使ったのはいずれも重量級のモデルです。SDXL系や蒸留・Turbo系の軽量モデルなら絶対時間は大きく縮むので、EVO-X2でも「数十秒で1枚」の試行錯誤圏に入ってくる可能性があります。RTX 5090をすでにお持ちならそちら一択ですが、「統合メモリ機か、専用GPU機か」で購入を悩んでいる方のために、軽量モデルでの再戦も近いうちにやってみるつもりです。速度差の倍率自体は変わらなくても、「統合メモリ機で試行錯誤が成立するか」の答えは変わるかもしれません。
まとめと次回予告
「RTX 5090はEVO-X2の12〜23倍速い。ただしEVO-X2も全種目を完走し、仕込み運用なら十分戦える」が今回の結論です。ComfyUIのAPIとシード固定を使えば、この手の比較が誰でも再現できるので、同じ2台持ちの方(いるのか?)はぜひ。
次回はいよいよClaude + ComfyUIでミュージックビデオ制作に挑戦します。今回テストしたMiniMax Music 3で楽曲を作り、MiniMax H3で映像を生成して1本のMVに仕上げる計画です。お楽しみに。

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