前回の記事で、Qwen Image 2.1が参照画像10枚でも崩れないことを確かめたばかりです。それから3週間ほどで、Black Forest Labs(BFL)が、画像生成・編集モデルFLUX 3 Image Kleinのオープンウェイト版を公開しました(日本時間の10月16日)。5.6Bと小ぶりで、「1台の家庭用GPUで動く」「参照画像は10枚まで」とうたっています。ComfyUIの標準のワークフロー(テンプレート)にも、公開と同時に並んでいます。
これは比べたくなります。ただ、その前に気になったのがライセンスです。比べた結果をブログに載せてよいのか、まずClaude Codeに調べてもらいました(後で書きます。載せて大丈夫でした)。
そのうえで、前回と同じEVO-X2・同じ課題・同じ参照画像で、Claude CodeにFLUX 3 Image Klein(以下、FLUX 3)を測ってもらいました。部分的な編集と、FLUX 3にだけある「囲み枠」の機能も試してもらっています。
先に結論を書きます。
- 参照10枚までの多参照は、互角でした。 人物も、足した要素も、どちらも全部そろいます
- 差が出たのは「なじみ」です。 参照5枚以上になると、Qwen Image 2.1は背景の写真に人物と犬を貼ったような絵になりがちでした。FLUX 3は、背景を人物に合う視点で描き直し、照明と影もそろえます
- 「種(シード)を変えても構図が変わらない」は、FLUX 3も同じでした。 前回書いた2.1の弱点は、FLUX 3でも残っています
- 部分的な編集は、どちらも頼んだ所は正確です。違いは頼んでいない所。 2.1は、並べても元の画像と見分けがつきません。FLUX 3は、背景の明るさなどが毎回少し変わります
- 速さは使い方で逆転します。 1枚目ができるまでならFLUX 3が速く(参照10枚で675秒、2.1は1,038秒)、同じ文で何枚も作るなら2.1が速くなります
- FLUX 3には、画像の領域を枠で指定して編集する機能があります。 2.1にはないので比較はしていませんが、1枚だけ試してもらうと、ちゃんと枠の所だけが変わりました
まず、結果をどうぞ


課題は前回と同じで、参照1枚目の男性に、2枚目以降の要素を1つずつ足していくものです。ジャケットを着せ、カメラを首から下げ、柴犬を足元に座らせ、背景をアーケード商店街にし……と、参照10枚では9つの要素を1枚の絵にまとめてもらいます。
検証の条件
- 機材:EVO-X2(Ryzen AI Max+ 395、Radeon 8060S)、ComfyUI 0.41.2(ROCm 7.2.1)
- 配線:ComfyUIの標準テンプレートのまま(下の表)。Claude Codeがテンプレートの中身を読み、同じ配線をComfyUIのAPIから組み立てて回しました
- 参照画像と種:前回と同じ10枚(FLUX.2 [dev]で作ったもの)と、種11・22・33の3つ
- 採点:Claude Codeのサブエージェント4体が、参照の枚数ごとに分担しました。今回はClaude Codeが、どの画像がどのモデルかを伏せ、並び順も混ぜて見せています。前回の項目に「なじみ」(足した物と人物が同じ場所で撮った写真に見えるか)と「種による違い」を足し、2.1の画像も採点し直しました
| 呼び方 | モデル | ステップ | 備考 |
|---|---|---|---|
| Qwen Image 2.1 | Qwen Image 2.1(int8版) | 25 | 前回の画像を使用(下の注を参照) |
| FLUX 3(補助あり) | FLUX 3 Image Klein 蒸留版(int8版) | 16 | テンプレートの既定。プロンプトを補助モデルで書き直してから渡す |
| FLUX 3(補助なし) | 同上 | 16 | 2.1と同じ文をそのまま渡す |
FLUX 3のテンプレートは、既定で「プロンプト補助」(BFLが用意した、文を詳しく書き直す専用の9Bのモデル)を通す設定でした。モデルカードにも「補助なしで使わないで」とあります。そこで、補助ありを主な条件にし、2.1と同じ文を渡す補助なしも並べました。
2.1の画像は、前回(ComfyUI 0.37.4)のものを使っています。ComfyUIが0.41.2に上がっていたので、Claude Codeが種11の7枚を作り直して照合しました。参照1〜4枚はほぼ同じ絵でした。参照5枚以上は人物の位置が少しずれましたが、描き方は同じでした。時間は、すべて0.41.2で測り直した値です。

ライセンス:載せて大丈夫か
- FLUX 3 Image Klein:FLUX Kommunity License v1.0。研究や趣味などの非商用なら使えて、生成した画像の所有権をBFLは主張しません。年商500万ドル未満なら、生成した画像の商用利用もできます(公開前の中身の確認などが条件)。ただし、生成した画像を使って、似た機能の別のモデルを改善することは禁止です
- Qwen Image 2.1:前回と同じく、研究・評価の目的に限るQwen Research License。性能の比較は評価の範囲です
このブログは広告を載せていないので、どちらも非商用の範囲です。比べた結果の公開を禁じる条項も、どちらのライセンスにもありませんでした。
多参照:互角。差が出たのは「なじみ」
| 参照1枚 | 2枚 | 3枚 | 4枚 | 5枚 | 8枚 | 10枚 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Qwen Image 2.1 | 3/3 | 3/3 | 3/3 | 3/3 | 1/3 | 2/3 | 3/3 |
| FLUX 3(補助あり) | 3/3 | 3/3 | 3/3 | 3/3 | 3/3 | 3/3 | 3/3 |
| FLUX 3(補助なし) | 3/3 | 3/3 | 3/3 | 3/3 | 3/3 | 3/3 | 3/3 |
(作例としてそのまま使える枚数)
人物と要素は、3つの条件とも全部そろいました。 63枚すべてで、人物は参照1枚目と同じ顔、足した要素は参照どおりです。参照10枚の自転車やコーヒーまで、どちらも落としていません。
差が出たのは、参照5枚以上の「なじみ」です。

- 2.1:背景が参照5枚目の写真とほぼ同じ画角のままで、その上に人物と犬が重なって見えます。人物は通りの遠近より大きく、正面から均一に明るい。犬は参照写真のスタジオの光のままで、影がありません。なじみの点は参照5枚で17%、8枚で33%、10枚で50%。参照5枚の2枚と8枚の1枚は「背景が参照の写真そのまま」で、作例としては使えない判定でした
- FLUX 3:背景は参照のアーケードだと分かるまま、ぼけを入れ、人物に合う低い視点で描き直します。照明の色と接地影もそろっていて、なじみの点は補助あり・なしとも全部満点でした
前回の記事でも、2.1の「合成写真っぽさ」には触れていました。ただ、そのときの採点では使える判定でした。今回はClaude Codeが「なじみ」を採点の項目に足したので、採点役が厳しく見ています。
一方、「種を変えても構図が変わらない」は、FLUX 3も同じでした。 どの条件も、参照1枚目の立ち姿(正面、中央、全身)をそのまま使います。種を変えて変わるのは、犬の左右、カップの高さ、鞄の位置くらいです。
プロンプト補助は効いたのか
補助あり・なしで、点はほぼ同じでした。補助ありはジャケットの前を閉じ、カメラを手で支えることが多い、という違いが出たくらいです。補助の文作りには、参照の枚数に応じて41〜191秒かかります。今回の課題では、文を丁寧に書けば補助なしでも十分でした。
参照画像がFLUX.2製なのは、FLUX 3に有利か
参照画像はFLUX.2 [dev]製なので、同じBFLのFLUX 3に有利かもしれません。そこでClaude Codeは、参照1〜3枚目を2.1で作ったものに替えても回しました。点はほぼ同じで、この課題では、出どころによる有利・不利は見えませんでした。
部分的な編集:直す所は互角、直さない所は2.1
次は、元の画像の一部だけを直す課題です。Claude Codeが3つ用意しました。
- 紺:白いTシャツだけを紺にする
- 眼鏡:眼鏡だけを外す
- 柴犬:参照の柴犬を、足元の右に座らせる

頼んだ編集は、36枚すべてで正確でした(2.1と、FLUX 3の補助あり・補助なし・囲み枠。それぞれ種3つ)。 紺のTシャツは縫い目まで残り、眼鏡は跡なく消え、柴犬は参照の顔のまま座ります。採点役は、ここでも全部を「使える」と判定しました。
違いが出たのは、頼んでいない所です。
| 課題 | 2.1 | FLUX 3(補助あり) | FLUX 3(補助なし) | FLUX 3(囲み枠) |
|---|---|---|---|---|
| 紺 | 38.9dB | 33.0dB | 30.8dB | 30.4dB |
| 眼鏡 | 37.6dB | 34.8dB | 34.8dB | 34.4dB |
| 柴犬 | 33.6dB | 32.8dB | 31.9dB | 31.5dB |
(直す所の外側だけで、元の画像と比べたPSNR。高いほど元のまま。種3つの平均)
- 2.1:頼んだ所のほかは、並べても見分けがつきません(採点役の判定。9枚とも)
- FLUX 3:背景の明るさ、背景の青み、眼鏡の縁の太さ、歯の白さなどが、並べると分かる程度に毎回変わります(27枚とも)。直す所の外の明るさは、紺では平均3〜8階調明るく(2.1は0〜2階調)、柴犬では1〜5階調暗くなっていました
FLUX 3は、絵の全体を少しずつ描き直しているわけです。BFLは、Kleinも「ピクセル単位の編集」ができるとしています。ただ、直していない所を元の画素どおりに残す処理(pixel restoration)は、同社のAPIの機能として紹介されていて、ComfyUIのテンプレートにはありません。
FLUX 3にだけある「囲み枠」
FLUX 3には、画像の領域を枠で指定して編集する機能があります。ComfyUIでは「Create Bounding Boxes」ノードで枠を描き、「FLUX.3 Layout Prompt」ノードで文に枠をつけて渡します。2.1の標準ノードには領域を指定する入力がないので、比べることはできません。そこで、Claude Codeに1枚だけ試してもらいました。

Claude Codeは、文では「片方だけ」と頼み、左右は言っていません。どちらの靴かは、枠だけで決まります。結果は、枠で囲んだ左の靴だけが赤くなりました。Claude Codeは確認のため、枠を右の靴に移した版と、枠をつけない版も作っています。枠を右に移すと右の靴だけが赤くなり、枠なしでは「片方だけ」と頼んでも両方とも赤くなりました。枠は、ちゃんと効いています。
ただ、使うには少しコツが要りました。
- 文が枠と食い違うと、文が勝ちます。 Claude Codeが最初に「黒い革靴を赤に」と頼んだら、枠があっても両方の靴が赤くなりました。「黒い革靴」は両方に当てはまるからです
- テンプレートのままだと、枠がそのまま届きません。 標準テンプレートは、枠つきの文もプロンプト補助に通します。補助の指示文には「座標を書かない」とあるので、枠は消えるか、言葉に言い換えられるはずです(試してはいません)。Claude Codeは今回、補助を外して、枠をそのまま渡しています
- 枠の外も、少し描き直されます。 枠は「どこを直すか」を伝えるもので、枠の外を元の画素のまま残す仕組みではありません(前の節と同じです)
この「場所を指定して少しだけ直す」機能は、いろいろ使えそうです。私は、動画生成のアンカー画像(最初や最後のコマに使う画像)を細かく直すのに使えるのではないかと思っています。服の色や小物だけを直して、同じ場面を作り直す、といった使い方です。枠の外が少し変わる点が動画でどう出るかも含めて、そのうち試してみます。
速さ:1枚目はFLUX 3、2枚目からは2.1

| 参照 | FLUX 3(補助なし) | FLUX 3(補助あり、補助込み) | Qwen Image 2.1 |
|---|---|---|---|
| 1枚 | 51秒 | 106秒 | 165秒 |
| 3枚 | 134秒 | 228秒 | 318秒 |
| 5枚 | 248秒 | 338秒 | 475秒 |
| 10枚 | 675秒 | 804秒 | 1,038秒 |
(種11、文字と参照画像の読み込み=符号化込み)
1枚目まではFLUX 3が速い。 FLUX 3は符号化が軽く(文字エンコーダが4B)、種を替えた2枚目以降もほとんど速くなりません。2.1は符号化が重く、参照3枚で約170秒、5枚で約300秒が1枚目にだけ上乗せされます。
2枚目からは2.1が速い。 符号化を済ませた状態(種44)で比べると、こうなりました。
| 設定 | FLUX 3 参照3枚 | FLUX 3 参照5枚 | 2.1 参照3枚 | 2.1 参照5枚 |
|---|---|---|---|---|
| 既定の設定 | 134秒 | 246秒 | 139秒 | 190秒 |
| comfy kitchen attention | 134秒 | 246秒 | 116秒 | 173秒 |
| EasyCache | 76秒 | 154秒 | 66秒 | 94秒 |
| kitchen+EasyCache | 75秒 | 154秒 | 54秒 | 91秒 |
| 8ステップ | 67秒 | 123秒 | — | — |
| 4ステップ | 34秒 | 62秒 | — | — |
(FLUX 3は補助ありの文。—は未計測)
- 2.1は参照の分を使い回し、FLUX 3は毎ステップ計算し直します。 前回書いた2.1のキャッシュの仕組みです。FLUX 3の1ステップは、参照1枚で約3秒、3枚で約8秒、10枚で約42秒と、参照が増えるほど重くなります
- comfy kitchen attentionは、FLUX 3では何も変えませんでした。 画素まで同じ絵で、時間も同じです。Claude Codeが調べると、FLUX 3のint8版のファイルには、この方式を使う設定が最初から書き込まれていました。足しても同じものに切り替わるだけ、というわけです
- EasyCacheは、FLUX 3でも1.6〜1.8倍効きます。 参照3枚なら、既定の設定とほぼ同じ絵です
- ステップを減らすと、参照5枚では別の絵になります。 一覧で見る限り崩れてはいませんが、人物の位置や背景の看板が変わりました。参照5枚では、4ステップの下見で選んだ構図が、16ステップでは再現しません
- ComfyUIの更新で、2.1が速くなっていました。 既定の設定の参照3枚で、前回の211秒が139秒に。その分、comfy kitchen attentionの効きは前回の約2倍から1.1〜1.2倍に下がっています
Claude Codeは参考に、FLUX 3のベース版(蒸留していない版、50ステップ)も3枚だけ回しています。参照3枚で720秒、10枚で3,353秒(56分)です。画質は比べていません。
人間がやったこと、Claude Codeに任せたこと
| 人間(私) | Claude Code |
|---|---|
| FLUX 3と2.1を比べる発案、ライセンスを調べる依頼 | ライセンスの調査と整理、検証の計画、テンプレートの配線の読み取りとAPIでの組み立て |
| モデルのダウンロード(Hugging Faceで利用条件に同意) | 下見と本走(約8時間の無人実行)、2.1の作り直しの照合、kitchenがファイルに書き込まれていることの特定 |
| 本走を始める判断 | 採点(モデル名を伏せて、サブエージェント5体)、部分編集の課題の設計と、直す所の外の計算 |
| 囲み枠の扱い(比較の主役にせず1枚で報告、応用は予告)と、動画のアンカー画像に使う発想 | 囲み枠のデモの設計(枠を左右に動かす、枠なしと比べる)、REPORT、この記事の下書きと図 |
| この記事のレビュー |
正直、気になっていること
- 1つの条件につき3枚です。 傾向として読んでください
- 採点はClaude Codeのサブエージェントによるもので、私は採点していません
- 2.1の画像は前回のものです。 作り直すと参照5枚以上で人物の位置がずれます。描き方が同じことはClaude Codeが目で確かめましたが、作り直した画像の採点はしていません
- 課題は「人物に物を足していく」と、部分編集3種類だけです。 人物2人の合成や画風の転写などは試していません
- 速さは、種1つで測った数字です。 前回、同じ条件でも1割ほどのばらつきがありました
- FLUX 3には、ほかの量子化版もあります。 NVFP4版は、RTX 50シリーズ(Blackwell世代)向けです。今回測ったのは、EVO-X2でのint8版だけです
まとめ
- 参照10枚までの多参照は互角。人物も要素も、どちらも全部そろう
- 参照5枚以上の「なじみ」はFLUX 3。2.1は背景の写真に貼ったような絵になりがち
- 種で構図が変わらないのは、どちらも同じ
- 部分的な編集は、頼んだ所はどちらも正確。頼んでいない所を守るのは2.1。FLUX 3は全体を少し描き直す
- 1枚目まではFLUX 3が速く、同じ文で何枚も作るなら2.1が速い
- FLUX 3のint8版は、comfy kitchen attentionが最初から有効。EasyCacheは効く
- FLUX 3の囲み枠は、文と食い違わなければちゃんと効く。応用は、そのうち試します
背景になじませたいならFLUX 3、元の絵を崩したくないなら2.1。手元の道具箱に、用途の違う2本が並びました。
部分編集機能は、ハゲを隠すのに使えそうです(ニヤリ

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